キリン社会保険労務士事務所 コラム

陽平コラム⑩  おすすめ小説.1

秋の気配が強まってきました。
日中はまだまだ暑い日が続きますが、朝晩の冷え込みの中に秋の訪れを感じます。
秋の訪れは夏の終わりを意味するもので、私は毎年この移行期間になると得も言えぬ寂しさを感じます。
仲の良い友人と楽しい時間を過ごし、「じゃあまた今度」と別れる時のあの感じに近いかもしれません。
夏の存在感は大きいですから。
とは言え、秋には秋で素敵なことがたくさんあります。
特に秋の夜長の読書はこの時期の風物詩です。
今回は秋のお供におすすめの小説をいくつか紹介したいと思います。

『ホテル・ニューハンプシャー』 ジョン・アーヴィング

現代アメリカ文学の金字塔と言われているので、読んだことのある方も多いかもしれません。
新潮社から文庫本で発行されており、同社の紹介文では「家族で経営するホテルという夢に憑かれた男と5人の家族をめぐる、美しくも悲しい愛のおとぎ話」と書かれています。
数多くの悲劇的な事件や事故が起こり、登場人物たちは傷付きながらも淡々と生きていきます。
起こった出来事だけを見たら、おとぎ話と言うより暗く現実的な話となりますが、作者の独特のユーモアが物語に一種の救済や希望を与えています。
とにかくすごい力強さを持った作品で、読んでいると圧倒されます。
私は時間が経つのを忘れて、夢中で一気に読んでしまいました。
アーヴィングはこの他にも『ガープの世界』、『熊を放つ』など素晴しい小説を数多く出していますので、いつか時間がある時に手に取ってみて下さい。

『はじまりはセントラル・パークから』 アーウィン・ショー

「短編の名手」として有名なショーの長編小説です。
この人の短編小説は確かに面白いです。
たった30~50ページで人の興味を引きつけて、感情を揺さぶるのはすごいテクニックが必要だと思うのですが、実にすいすいとストーリーが進みます。
それでいて、ちゃんと感情移入させられています。この小説の場合もそうでした。
なんとなく読んでいると目が離せなくなっていて、最後の方には様々な感情が揺さぶられています。
ある平凡な家族がある出来事をきっかけに…というありがちなストーリーですが、そういった事を全く感じさせない自然な流れがあります。

『ダンス・ダンス・ダンス』 村上春樹

初期三部作の最後の作品『羊をめぐる冒険』の続編です。
いなくなった人を求める主人公(僕)が、様々な人と関りながら不思議な雰囲気で話は進みます。
初期の村上作品を覆う深い喪失感は健在ですが、初期作品に漂う無臭感や透明感のようなものはより洗練されていて、とても読みやすいです。
村上春樹の凄いところは難しい言葉や表現を極力排して、それでいて心の隙間に潜む感情を上手く表現するところだと思っています。
独特の比喩も抜群の効果を発揮します。
村上作品はほとんど全て好きですが、個人的にはこの『ダンス・ダンス・ダンス』は特別です。

以上3作品を紹介しましたが、どれも読み応えがあります。
私は読み終わった後にスポイルされたような、一種の無力感を覚えました。
小説は気軽な物しか読まないという人には向かないかもしれません。
次の機会には、カジュアル読書のための小説を紹介したいと思います。
風邪を引きやすい時期ですので、体調と相談しながら読書に勤しみましょう。

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