陽平コラム③ W杯、采配の妙~失敗編~
前回はドイツ大会で名を上げたといいますか、実力を発揮した監督に触れましたが、それはやはり一部で、ほとんどの監督たちは失敗の烙印を押されてドイツを去りました。
強豪国を率いる監督たちほど、その烙印は重いものになります。
マスメディアや自国民からの一斉砲火を浴びるのでしょう。
大変な職業です。
ストレスで胃や心臓に疾患を抱える人はとても多いと聞きます。
ですが、「このチームはあそこが良くない」、「あの選手交代は失敗だった」などと無責任な話をするのは、サッカーファンのお楽しみです。
という訳で、監督さんたちには同情しながらも今大会の失敗を振り返りましょう。
弱気になったペケルマン
常に優勝候補に挙げられる南米の2チームは、それぞれのやり方で期待を裏切りました。
アルゼンチンは予選リーグと決勝トーナメントでは別のチームになったようです。
そしてペケルマン監督はたった1試合、采配を誤ったために敗者となりました。
準々決勝での開催国ドイツ相手での試合です。
司令塔のリケルメをボランチの選手と交代させ、秘密兵器のメッシを秘密のままにした弱気な采配により、本来攻撃的なベクトルを持つチームは混乱しました。
せっかく素晴しいチームを作ったのに、優勝を意識しすぎたのかもしれません。
ベスト8で沈むチームでは無かっただけに残念です。
可能性を見せながら散っていったアルゼンチンとは対照的に、ブラジルは何の可能性も感じさせないままに大会を退きました。
圧倒的な優勝候補としてドイツに乗り込んできたのが嘘の様に、スーパースターたちは空回りを続けました。
前線ではそれぞれ孤立した選手たちが、個人技でドリブル突破を仕掛けるだけで、チームとしての方向性に欠けていました。
それがブラジル本来の方向性(=個人技)とも言えなくはありませんが、戦術重視の今大会で、ブラジルの姿は時代に取り残された恐竜のようでした。
ともあれ、調子の悪いスターに固執し続け、チームに確固たる戦術を植えつけられなかったパレイラ監督は叱責を免れないでしょう。
退屈なイングランド
大会前にはそのブラジルに次ぐ優勝候補と見られたイングランドも、やはり輝けないままに帰路に着きました。
自陣ゴール前に10人が張り付き、攻撃への展開はロングボールからのこぼれ球頼み。
世界中がうらやむ中盤のタレントたちも、自分たちの頭上を通過するだけのボールにはどうしようもありません。
ロングシュート、ミドルシュートが多かったのは、ゴール前での選択肢が少なかったからに他ありません。
攻撃的な選手を配置して、守備的なサッカーをする。無茶苦茶な話です。
エリクソン監督は真面目で温厚な人柄によるのか、選手たちからは支持されましたが、はっきり言ってあんなサッカーは二度と見たくないです。
またもや理由不明のまま敗れたスペイン、ボールは回るがチャンスは作れないオランダ、ダークホースと見なされながらグループ最下位に終わったアメリカなどなど。
ほとんどのチームは敗者となって大会から去らなければなりません。
優勝するのは1カ国ですから、それ以外は基本的に全て敗者となります。
となると、どの様に負けるかというのがひとつ大きなテーマになってきまして、監督たちの仕事も、そこの見せ方に大きく委ねられると言えます。
あくまで攻撃的に、最後まで攻めの姿勢を忘れずに、というのが理想的な負け方ではないでしょうか。
結果はともかく内容や気持ちで魅せるといったチームは多くの人から愛されます。
かの有名なヨハン・クライフは言いました。
「勝利は貪欲に、しかし、散り際は美しく」。