キリン社会保険労務士事務所 コラム

超短編シリーズ(24)「ペットの王様」

犬(雑種雄名前シロ、雑種雄名前クロ)、猫(三毛雌名前ミー、三毛雌名前チビ)、小鳥(ブンチョウ、セキセイインコ)、ヒキガエル、金魚、ザリガニ、ヤモリ、緑亀。
カブトムシとかクワガタムシ・カナブン・カミキリムシ・玉虫とかオニヤンマのヤゴとか蚕の幼虫とか鈴虫・コオロギ・バッタの類とかシーモンキーとかこまかいのを省いても僕は現在までにいかにもいろんな種類のペットを飼ってきた。
なにしろ6歳違いの弟と11歳違いの妹も子どもの頃は僕にとってペットみたいなものだった。

これだけたくさんの種類のペットを飼ってきたのだから、そろそろひとつ「ペットの王様」を発表しようではないかということになった。
久しぶりの超短編シリーズ(約4年ぶり!)、たしかに悪いタイミングではない。
それに選択肢が増えるとかえって困る人という人は結構いるものだ。
「ペットを飼いたいのだけど、いったい何を飼ったらいいのかわかんない」
という気の毒な人々のためにも僕はペットの王様を発表することにした。

ペットの王様それは緑亀である。
「やっぱり!」という声が聞こえてきそうである。
反対に予想外の結果に不満の方も意外に多いかも知れない。

緑亀は本名を「ミシシッピー赤耳亀」という。
アメリカのミシシッピーあたりが原産で耳のところが赤いんだ。
「緑亀」の名称の方がポピュラーなので今回は緑亀と呼ぶことにする。
次に緑亀が「ペットの王様」である代表的な理由を三つ挙げる。

理由その1 緑亀は長生き
とにかく「亀は万年」というくらいだから当然長生きだ。
「(「種の起源」の)ダーウィンがガラパゴス諸島で捕まえたゾウガメが最近死んだ」というニュースが新聞に出ていて驚いた。
176歳だったそうだ。
かわいそうにもしダーウィンに捕まらずにのどかなガラパゴスの地で家族と一緒に楽しく暮らしていたらいったい何歳まで生きたことか。
僕の計算だとあと144年は間違いなく生きた。
緑亀も亀の端くれだから、すくなくとも100年くらい生きるはずだ。
我が家の緑亀は今年で6歳。したがって少なくともあと90年は生きると僕はみている。
ようするに僕より長生きをする。
ペットの分際でご主人様より早く死ぬのは許されない。
「キング・オブ・ペット」の緑亀なら死んでご主人様を悲しませるような愚かなことは決してしない。
「長寿」これが緑亀をしてペットの王様と呼ばれる第1の理由である。

理由その2 飼育が楽である
緑亀の飼育には金がかからない。
まず餌代がかからない。
緑亀は大食いである。
とくに暖かい日は食欲も湧くらしくおいしそうにバグバグ猛烈な勢いで食べる。
それも全国どこのペットショップでも売っているあの安くてしかもまずそうな固形餌をである。
ペット王緑亀はけなげにも文句のひとつも言わず一粒残さずあのまずそうな固形餌を平らげる。
餌にかかる費用は一匹あたり平均で年間4千円程度だ。餌代一匹1日10円也。
生後2~3年のまだ小さいうちはもっと安くてすむだろう。
水槽代とかもかからない。
我が家では水槽は台所用の洗ったばかりのお皿とか入れる水切りケースを代用している。
100円ショップで売ってるやつだ。
小石はやっぱり100円ショップで買った。3袋で300円。
合計400円だ。
水切りケースは縦横高さが40cm×60cm×30cmくらいあって広さも十分。
おっと、安いと言えば緑亀そのものが何しろ安い。
小さな赤ちゃん緑亀は1匹500円くらいだ。
5百円玉一個で買える。まさしく銭亀だ。
今日から「ワン・コイン・ペット」と呼んでしまおう。

さて、もちろん経済的な理由だけではない。
緑亀の世話はすこぶる楽である。
自慢ではないが我が家では水は週に一度しか取り替えない。
週一だと水はたしかに汚れているが、緑亀は「それもまたよし」と平然としている。
実にけなげである。
しかも冬の間は冬眠してくれるのでこれはもう本当にまったく手がかからない。
「キング・オブ・ペット」の緑亀は冬の寒い朝にご主人様を凍えさせてまでも自分の世話をさせるなどという愚かなことは決してしない。
「手間いらず」これが緑亀がペットの王様に選ばれる第2の理由である。

理由その3 緑亀はおとなしい
「お宅の緑亀の鳴き声がギャーギャーうるさくて眠れないよ。なんとかしてよ」
今日の今日まで僕はこのような苦情を近所の方から言われたことはない。
我が家に限らず、飼っている緑亀がうるさいという理由で隣近所とうまくいっていないという例を僕は知らない。
なぜか。
それは緑亀が人間社会では決して大きな声を出さないからだ。
大声を出さないだけではない。
手拍子を打ったり、口笛を吹いたり、つめを研いだり、無用なバタ足をしない。
貧乏ゆすりすらしない。
それだけではない。もっと大事なことだが、緑亀は何があっても決して人間を襲わない。
そんなこと緑亀には想像すらできないだろう。

何万年か後、もしかしたら地球は猿に支配され人間は猿のペットになっているかもしれない。
猿は油断ならない相手だ。
しかし、60億年経っても決して緑亀は人間をペットにしたりしない。
間違いない。僕は緑亀にちゃんと確認した。
「キング・オブ・ペット」の緑亀は、あくまでも従順でご主人様に無用な心配をかけるような愚かなことを決してしない。
「平和的かつ友好的」これが緑亀がペットの王様として君臨し続ける第3の理由である。

超短編シリーズはフィクションです。念のため

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